自社株買いの目的、メリット、株価上昇の理由を知っていれば、株式投資はさらに楽しめる!
自社株買いとは、上場企業が現在発行している自社の株式を市場から買い戻すことをいいます。
そもそも、企業は資金調達のために上場させているに、なぜ自社の株式をわざわざ買うようなことをするのか、ちょっと不思議ですよね。
ここ最近、自社株買いがガンガンと増えている理由は、企業と株主の両者にメリットがあるからなんです。
2019年度においては、300社以上で4兆円以上の自社株買い決議がなされています。なので、株式投資をするにあたって自社株買いを無視することが出来ないのです。
また、我々個人投資家は経験則的に自社株買いが発表されれば株価は上昇することも知っています。
なぜ、株価は上昇するのか、自社株買いの目的、メリット、効果などと一緒に具体的に解説していきます。
さらには、2018年に5兆3000億円強と過去最高額なった株式消却についても解説します。
自社株買いは株主への利益還元策
自社株買いすることは、株主への利益還元策のひとつと言われ、既存株主にとっては好材料のニュースとなります。つまり、自社株買いのニュースが発表されると株価は上昇する傾向にあります。
なぜなら、発行済株式総数が減少するからです。単純に流通している総数が減少すれば、物の価値が上がるのと同じです。
一般的に、株主への利益還元策を考えた場合、自社の株価が割安であると考えるならば、「自社株買い」を行い、株価を上昇させることで利益還元を行い、割高であると考えるならば、「配当金」で利益還元を行います。
自社株買いによるアナウンスメント効果
自社株買いを発表するとアナウンスメント効果もあると言われています。
以前、ソフトバンクが自社株買いを発表した時に、孫正義社長は、ソフトバンクの株価は実力よりかなり安い。とすると、投資するならソフトバンク株が一番リターンが良い、ということを言っていました。
つまり、会社の事情を一番良く知っている会社自身が自社株を購入するということは、株価が割安となっていることをアピールすることと同じことです。
自社株買いの発表を広くアナウンスすることによって、さらなる投資家の買いを呼び込むことが可能となります。そうすると、株価が上昇しやすくなるという訳です。これがアナウンスメント効果です。
ストックオプションのために自社株を取得
取締役や使用人に与えるストックオプションに利用するために、会社が市場から自社株を購入します。そして、その買い入れた自社株式を買い入れた金額以下で取締役等に譲り渡すことが一般的です。
企業側からすると損失となりますが、株価が騰がると、保有している自分の利益も増えるので、取締役等は自社株が騰がるよう、より一層業務に励むことになります。
つまりモチベーションをアップさせるために自社株買いするわけです。
ただし、通常ストックオプション行使で株式数が増えると株式価値の希薄化につながります。この株式価値の希薄化を防止するために自社株買いしているとも言えますね。
敵対的買収の防衛策としての自社株買い
自社の株価が安く、低迷しているとなれば、他社からの敵対的買収のリスクが高まります。そこで、敵対的買収の防衛策として自社株買いがあります。
自社株は保有する持ち株比率を高めるだけでなく、自社株買いによる株価上昇につながるので、敵対的買収にかかる資金も上昇し、買収が難しくなるという効果もあります。
自社株買いで経営指標改善、目標株価が上昇する
自社株を購入することで、経営指標の改善効果が得られます。つまり、1株当たり利益が計算上、発行済株式数から自社株は控除されるため、1株当たり利益が大きくなります。
例えば、当期純利益が100万円、発行済株式数が1万株とすると、1株当たり利益は、
100万円÷1万株=100円
となります。ここで、自社株を2,000株(20%)取得すると、1株当たり利益は、
100万円÷(10,000-2,000株)=125円
となり、25%増加します。株価と1株当たり利益の関係はPER(株価収益率、Price Earnings Ratio)の略)と呼ばれ、株価を1株当たり利益で割った計算式で表されます。
PER(株価収益率)=株価÷1株当たり利益
要するにPERとは、株価が利益の何年分期待できるか、ということです。言い換えると、何年先の利益までが現在の株価に含まれているのか、ということを意味します。
具体的に言いますと、PER10倍であれば、10年先の利益が現在の株価に含まれているということです。とすると、PERが大きくなればなるほど、長期間にわたる利益が株価に組み込まれ、期待度が高いということになりますが、株価が高い、割高ということにもなります。
つまり、自社株買いによって、1株当たり利益が大きくなり、PERが一定だと考えると、株価に割安感が出て、多くの投資家に買われる機会が増えてきます。
例えば、A企業の株価は現在950円、PERを10倍とします。自社株買いをすることによって、1株当たり利益が大きくなりますね。そうすると、その瞬間に目標とする理論株価も高くなります。
自社株買い前 1株当たり利益100円×PER10倍=目標理論株価1,000円
自社株買い後 1株当たり利益125円×PER10倍=目標理論株価1,250円
現在の株価が950円だとすると、目標とする株価まではそれ程の値幅はなく、投資家としては旨味がありません。しかし、自社株買いをすることにより、一気に目標株価が上がり、投資機会が出てきます。
自社株買いが財務レバレッジを上げ、ROEを改善させる
自社株買いをすると、財務レバレッジ(総資産÷自己資本)が高まることでROEが上昇します。投資家はこれを好感してこの企業の株を買い、そのため株価が上昇することもあります。
ここで、財務レバレッジとROE(株主資本利益率)について解説しておきます。
財務レバレッジとは、企業の持つ総資産を純資産額(自己資本)で割ったものをいいます。簡単に言いますと、自己資本を1とした時、その何倍の大きさの総資本を事業に投下しているかを示す数値です。
言い換えると、財務レバレッジはその企業における負債の利用度合を測るためも使われます。財務レバレッジの数字が高いと借り入れが多いことを意味するので、財務安全性という観点からは、リスクの高い会社と判断されます。
ROE(株主資本利益率)とは、「Return on Equity」の略称で、株主資本(資本金)を使ってどれだけの利益をあげたのかを分析するための財務指標です。ROEは、当期純利益を株主資本で割って計算することができます。
利益率という名称からもわかる通り、ROEは高いほど資本金を効率的に活用していると判断することができます。
自社株は会社が株式市場から購入する資産ですが、一方で会社にとっては、株式を発行することによって調達した資本金を回収する(資本金の払い戻し)ことにもなります。
会計上は、貸借対照表(B/S)の資産ではく、純資産の部にマイナス(△自己株式)として計上します。理由としては、資本金を減少(減資)させるためには会社法で厳格な手続き(株主総会の特別決議)が必要とされているからです。
このような理由で、自社株(自己株式)を取得すると純資産が減少することで、負債の割合が高くなり、その結果財務レバレッジが高まることになります。ちなみに、ROEは、次式のようにも計算できます。
ROE=当期純利益率×総資産回転率×財務レバレッジ
この計算式を見て頂ければ、財務レバレッジの上昇はROEの上昇につながることがわかります。このような理由で株価が上昇していくのがお分かりいただけたと思います。
自社株買い発表銘柄買いは飛びつき注意
企業の決算発表やIR情報の中で自社株買いという言葉を目にしたこともあると思います。自社株買いを発表する同時に個人投資家の買いが集まることも多く、発表後に株価は上昇してきます。
そのため、自社株買いの発表に注目している個人投資家も多いとも言われています。
自社株買いは株主にとって利益還元策ということも解説しましたが、実際に自社株買いが行われることで、自社株買いする期間内に継続的な買いが入るため、株価の下支えが期待できるというメリットもあります。
このことも好材料と判断されて、個人投資家からの買いが集まることも多いとも言われます。これは、自社株買いを行う企業にとっても大きなメリットになっています。
ここで、自社株買い発表会社は買いなのか?それとも、売りなのか?となれば、一概に答えることはできませんが、我々個人投資はテクニカル分析がファンダメンタルズ分析も考慮して判断したいところです。
また、自社株買い発表後は、大きく窓をあけて寄り付く場合も多いので、窓の大きさによっては、ジャンピングキャッチには注意しましょう。
なお、初心者でも勝てるシンプルな投資手法はこちらです!
自社株買いした株式の処分方法
自社株は、1株当たり利益の計算上、発行済み株式総数から控除されますが、実際には存在している株券なので、場合によっては再度株式市場に売却することもできます。
これも処分方法のひとつです。ただし、こうすると発行済み株式総数が元に戻り、1株当たり利益も元に戻ってしまうということが起こります。
通常、自社株は消却することが一般的です。他に、役員、従業員等への新株引受権の授与、従業員等への退職金支給原資、株式交換によるM&Aなどに活用できます。
通常、自社株のことを会社法(商法)では、自己株式といいます。この自己株式ですが、消却というのは文字通り自己株式を消滅させることです。
一般的に、1株当たり利益の計算は、自社株を取得した時点で効果が認識されますので、消却の手続きをしたところで影響はありません。
ただ、実際に株券を消滅させることで、その後、株式市場に再度売却する手段が絶たれますので、株価に対しては好材料としてとらえられることが多いです。
次の処分法としては、報酬として役員や従業員へ自社株を譲渡です。モチベーションを高めることにつながり、これが会社の業績アップにもつながるということです。
さらには、M&Aによる譲渡があります。会社を買収するには多額の資金が必要ですが、自社株という発行済株式を活用し、株式交換によるM&Aを行えば、資金自体を極力少なく出来ます。
しかも、株価を高く維持できれば、株式交換時の際には株式数が少なくすむメリットもあります。
2018年の自社株消却は過去最高額5兆3000億円強
さきほど、自社株は消却することが一般的と書きました。2018年からはその傾向がかなり強くなっています。
ちなみに、2017年の自社株消却額は約2兆8000億円、2018年は5兆3000億円強と過去最高となっています。しかも、その勢いは止まらず、2019年はこの最高額を更新する可能性が非常に高いです。
この自社株消却は株重視への本気度を表すとも言われ、前向きなニュースとして捉えられます。つまり、言い換えると、経営者がマーケットを意識した企業経営に変わってきているとも言えますね。
まとめ
自社株買いの目的、メリット、株価上昇の理由を知ろう、いかがでしたでしょうか?
自社株の取得や活用方法は、会社の財務指標や株価に好影響をもたらすので、財務戦略のひとつとして、とても有効です。しかも、株主にもメリットがあります。
これに対して、自社株買いは株式市場から資金調達したキャッシュを使いきれませんでした、と言って返金したことと同じでもあります。これは、経営者が資金調達したキャッシュを上手く使いきれなかったことを意味します。
自社株買いする企業には、メリット・デメリットがありますが、我々個人投資家は、自社株買いという事実を踏まえて、利益になるように投資行動をとりましょう。
そうそう、最後に自社株買いの参考になるサイトのご紹介です。
https://www.toushi-radar.co.jp/jisya
※株式投資データボックスの自社株買いの外部サイトへ
ということで、自社株買いを上手く利用してスマートトレードを。
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